OpenAIの技術を使ったAI導入事例8選
本記事では、OpenAIのサービスを活用して業務効率化、顧客体験の向上、新しいサービスの開発に取り組んだ8つの企業の事例をまとめました。
各企業がどのようにAIを活用し、実際にどんな成果を上げているのか、早速見ていきましょう!
Moderna
【業種】製薬・バイオテクノロジー
課題
製薬大手のModernaは、mRNA技術を用いた医薬品開発を進め、5年以内に最大15の新製品を市場に投入する目標を設定しています。この目標達成に向けて、同社は効率的な組織体制の構築に取り組んでいます。
特に、限られた人員で成果を上げられる体制作りが重要な課題となっているようです。
生成AIで全社的に業務効率を向上
Modernaは、ChatGPT Enterpriseを全社的に導入し、6ヶ月以内に高い採用率と習熟度の達成を目指す計画を立てました。この計画には、専門家チームによる変革プログラムの実施、個別トレーニングやAI学習支援ツールの提供、社内AI専門家の育成などが含まれています。また、週2,000人が参加する社内AIフォーラムを開設し、経営陣主導でAI活用文化の醸成に取り組んでいます。
まず、同社は独自のAIチャットボット「mChat」を開発し、80%以上の従業員が利用を開始しました。その後、ChatGPT Enterpriseの導入により、2ヶ月で750のGPTsが社内で作成されました。現在、従業員は週平均120回のAI対話を行い、40%のアクティブユーザーが自らGPTを作成しています。
臨床開発では「Dose ID」GPTを活用し、臨床データを分析して最適なワクチン用量の選定を行っています。法務チームは「Contract Companion」GPTで契約書の要約を、「Policy Bot」GPTで社内ポリシーの案内を効率化。ブランディングチームも、四半期決算発表資料作成支援GPTや投資家向けコミュニケーション改善GPTを活用し、業務の質と効率の向上に取り組んでいます。
利用サービス
GPTs, ChatGPT Enterprise, OpenAI API
Klarna
【業種】フィンテック・決済サービス
課題
Klarnaは、世界中の人々の買い物と支払い方法を改善することを目指していました。
オンラインショッピングの利便性を向上させ、カスタマーサービスの品質を高めつつ、従業員の生産性を向上させることが課題でした。
生成AIでショッピング体験と顧客サービスを革新
Klarnaは、ChatGPTのプラグインを開発した企業の一つであり、フィンテック企業としては初めての取り組みでした。このプラグインにより、ユーザーは会話形式でショッピングの提案を受け、Klarnaの価格比較ツールにリンクされた製品情報を得られるようになりました(現在、プラグインは廃止)。
また、OpenAIのAPIを活用したAIアシスタントを導入し、多言語対応のカスタマーサービス、返金・返品の管理、健全な金融習慣の促進など、様々なタスクを処理しています。導入から1ヶ月で、AIアシスタントは230万件の会話を処理し、フルタイム従業員700人分相当の業務を行いました。顧客満足度は人間のエージェントと同等を維持しつつ、問い合わせ解決の正確性が向上し、再問い合わせが25%減少しています。
社内では、ChatGPT Enterpriseを全従業員に提供し、日々の業務に活用しています。従業員の90%が毎日OpenAIの生成AIツールを使用しており、コミュニケーション部門で93%、マーケティング部門で88%、法務部門で86%という高い利用率を達成しています。
利用サービス
ChatGPT Enterprise, OpenAI API, ChatGPTプラグイン(現在は廃止)
Paf
【業種】ゲーミング
課題
Pafは、技術革新に対応し続けることを目指し、従業員の生産性向上と事業運営の効率化を図る必要がありました。また、ソフトウェア開発者の育成も課題でした。
生成AIで開発プロセスを効率化し、エンジニアの生産性を向上
Pafは、100人の開発者全員にChatGPT Enterpriseを提供し、日常的な開発タスクの効率化を図っています。
エンジニアリングチームは85以上のGPTsを作成し、開発プロセスの改善に取り組んでいます。例えば、Swagger GPT、TypeScript GPT、GraphQL Nexus GPT、Relay GPT、React GPTなど、バックエンドインフラストラクチャの作成からフロントエンドコンポーネントの生成まで、様々な専門的なコーディングGPTを活用しています。これにより、開発者はアプリケーションフローとAPIの生成をほぼ自動的に生成できるようになりました。
さらに、Pafはgrit:labコーディングアカデミーにChatGPT Enterpriseを導入し、65人の開発者志望者のトレーニングを支援しています。この取り組みにより、受講生がシステムアーキテクチャの理解を深め、スキル向上のペースを加速させることができるようになりました。
利用サービス
ChatGPT Enterprise, OpenAI API, GPTs
Clay
【業種】SaaS(営業支援ツール)
課題
営業チームは、データ収集・検証・充実化のプロセスが複数のツールに分散していることで、効率的な営業活動が難しくなっていました。高品質なデータを集約し、個別化されたメッセージングを可能にする統合ソリューションが求められていました。
生成AIでデータ充実化と営業活動を革新
Clayは、GPT-4を統合したClaygentというAIエージェントを開発しました。Claygentは、ウェブサイトを訪問して関連情報を見つけ、要約する能力を持ち、営業開発リサーチャーの作業を模倣しつつ、はるかに高速かつ低コストで実行します。
Claygentの効率を向上させるために行った取り組み:
GPT-4に渡すトークン数を最適化し、各用途に適したモデルを選択
ウェブスクレイピング時に、GPT-4を活用して目的の情報がある可能性が高いセクションを特定し、データ収集を効率化
必要な情報を見つけるために、検索範囲を段階的に絞り込む手法を採用
複数のデータプロバイダーからの情報を組み合わせ、異なるモデルを使用して検証し、データの信頼性を向上
この取り組みにより、Clayは過去2年間で毎年10倍の成長を達成し、10万人以上のユーザーを獲得しました。顧客の30%が毎日Claygentを使用し、1日あたり50万件の研究と営業タスクを処理しています。
利用サービス
OpenAI API, ChatGPT